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住宅を対象とした侵入犯罪の現状

減ってはきていますが、空き巣などの「不正侵入」による被害は今もあります。

その数値をデータで確認して被害に遭わないように心がけましょう。

※警察庁(住まいる防犯110番)や日本防犯設備協会が公開している数値を参考にしています。

 

侵入窃盗の認知件数と検挙件数

侵入窃盗の認知件数と検挙率データ

それぞれの数値(認知件数、検挙件数、検挙率)は省略します。

ここでは「認知件数」が年々減少していることと「検挙率」が少しずつ増えていること、を確認してもらえればOKです。

 

「認知件数」とは警察が認知(=犯罪を確認)できた件数です。犯罪の発生した件数ではありません。

ちなみに認知されないケースは、被害者が被害届を出さない、犯罪が誰にもバレていない、などです。

ただ基本的に、認知件数と発生件数は比例するため、侵入窃盗は年々減少しているとみて問題ないでしょう。

2020年の認知件数は、約21,000件と10年前である2010年の75,000件の3割以下になっています。

防犯設備機器の普及と居住者の意識の高さが、これらの数値に反映されていると言えそうです。

 

検挙率は2020年で71.4%と2010年の53.3%より18%近くも高くなっています。

これは「防犯カメラ」の普及によるところも大きいでしょう。

検挙率が高い→窃盗しても捕まりやすい→窃盗を諦める→認知件数が減少

といった図式になっていると思われます。

 

侵入窃盗の手口

侵入窃盗の手口のデータ

上のデータは、2020年の不正侵入や侵入による窃盗の手口の割合です。

全体の3分の2が空き巣ですが、忍び込みや居空きが3分の1近くあることも驚きでしょう。

玄関などから簡単に入れるようなら、居住者が就寝中の忍び込みも簡単です。

居空きは1人暮らしなど居住者が少ないことがわかっていて、かつ入浴中などのタイミングを狙って侵入するものです。

 

大切なものを盗られる空き巣被害に遭うのもショックですが、侵入犯と家の中で鉢合わせしてしまう忍び込みや居空きに遭った場合は、最悪のケースも考えられます。

忍び込みや居空きで侵入してくる段階で、(居住者と鉢合わせした場合を想定し)ナイフなど居住者を傷つけるような武器を所持している可能性はかなり高いと考えられます。

空き巣に入られないようにするのはもちろん、忍び込みや居空き被害に遭わないようにすることも大事な対策と言えます。

 

侵入窃盗の発生場所

侵入窃盗の発生場所

これは、どういったところが狙われているか、というデータです(2020年版)。

やはり昔から変わらずに一戸建てがもっとも多くなっています。

一戸建ては、植木や塀などがあれば道路や通りからの目隠しになるし、家の中に入れる侵入できる場所(玄関、勝手口、ベランダ等)も共同住宅うあ集合住宅などより多いのが理由でしょう。

さらに一戸建ては、ポストに溜まる郵便物や窓のシャッター、電気の点灯など居住者不在時の確認もしやすいので、空き巣のターゲットになりやすいです。

 

一戸建てへの侵入は掃き出しガラスから

一戸建ての侵入箇所と侵入手段

侵入箇所と侵入手段のデータ

 

もっとも狙われやすい一戸建ての「侵入箇所」と「侵入手段」の2020年のデータです。

侵入箇所の1位は数年来変わらず「窓」です。

玄関は防犯性の高い鍵が増えていること、比較的道路や周囲から目につきやすい場所にあること、などから侵入がしにくいのでしょう。

しかも窓の鍵部分にあたるクレセントは、昔から特に進化はしていません。

一戸建てに住んでいる人は、後述する対策をしっかりおこなって不正侵入を防止するようにしてください。

 

侵入手段の1位は「無施錠」です。

文字通り、鍵がかかっていない入口から侵入するというものです。

マンションなど共有玄関にオートロックが付いている場合、部屋に帰ってきて鍵をかけない人もいることはよく耳にします。

しかし一戸建てで鍵をかけないのはかなり危険です。

外出時の閉め忘れだけでなく、在宅時も忍び込みや居空きのリスクを減らす意味でも、必ず施錠はするようにしましょう。

 

侵入手段の2位は侵入箇所1位だった窓と連動するかのように「ガラス破り」となっています。

実際に侵入するのは、窓ガラスではなくベランダなどに面した「掃き出しガラス」と呼ばれる、床面と同じ高さの大きなガラスからです。

このガラスを開けることができれば、大人でも簡単に中に入ることができます。

 

ガラス破りという名前にはなっていますが、侵入者が自分の体が入れる面積のガラスを割って入るわけではありません。

クレセント部分のわずかな面積のガラスを割るなり破るだけです。

そうすれば、クレセントを開錠してサッシを開けることができるからです。

後述しますが、ガラスを割られてもクレセントが開かない対策が必要です。

具体的には鍵付きのクレセントに交換したり、クレセントの補助錠を付ける、などです。

ぜひ検討してみてください。

ガラス破りで侵入

5分以上かけさせれば68.5%は諦める!

10分以上なら91.4%が侵入を諦める

侵入を諦める時間

いろんな防犯の記事などでよく目にするのが上のデータです。

侵入するのにどのくらいの時間をかけさせれば侵入を諦めるかという数値です。

一般的に言われる「5分以上」なら68.5%が侵入を諦めさせることができます。

68.5%でも安心できない場合は「10分以上」の91.4%を目指して防犯対策をしましょう。

 

10分以上かかっても8.6%は侵入を諦めない、という部分も気になりますが、おそらくリスクを冒しても侵入さえできれば家の中に相当な見返り(=現金とか宝石、貴金属など)がある場合と推測されます。もしくは、いくら時間がかかっても見つかる心配がないということでしょうか。

侵入にかかる時間は、防犯機器だけでなく侵入者の用意している工具、技術力などでも変わってきます。

なので、侵入に何分かかるか具体的な時間は予想できません。

対策できる範囲・対策可能なレベルでの防犯対策をしておくことをおすすめします。

 

侵入を諦める要素

侵入にかかる時間とは別に「侵入を諦めさせる要素」もあります。

  • 声をかけられた 63%
  • 補助錠がある 34%
  • セキュリティーシステム 31%
  • 犬を飼っている 31%
  • 防犯ビデオ 23%
  • 面格子 23%

もっとも多い「声をかけられた」以外は、居住者が事前に対策できるものばかりです。

日頃から近所づきあいをしていれば、近所の人などが見知らぬ人を見かけて声をかけることもあるでしょう。

ただ最近は昔のような近所づきあいも疎遠になって

いたり、見知らぬ人に声をかけるようなご近所さんがそんなに多くいるとも思えません。

居住者が自分で対策できることを確実に実行するようしていきましょう。

 

ご近所さんとあいさつ

 

変わりつつある侵入犯罪の内側

近年はコンビニでも現金が引き出せるATMが普及しているため、家に現金を置かないケースが増えています。

加えて新型コロナのまん延により、コロナ禍以前に比べて在宅率が高くなっています。

侵入犯罪が減っている要素ばかりです。

 

しかし、現在は「情報屋」と言われる仲介屋のような存在があると言われています。

この情報屋は「不在情報」(=家に誰もいない時間帯、旅行中で不在など)や「居住者情報」(=現金を家に置いてある、お金持ちなど)を不正侵入しようとしている犯罪者に提供。その情報をもとに、侵入がおこなわれているというものです。

これは情報屋、侵入犯ともにメリットがあります。

情報屋は、自分が侵入するわけではないので捕まるリスクがない。

侵入犯は、空き巣をするための下調べも減るうえに成功率が高い侵入ができる。

どのくらいの情報屋がいるのか、情報の精度の高さはどの程度なのか、など全貌はまだ不明ですが、こういった現代ならではの連携による侵入も存在するようです。

侵入犯イメージ

 

 

侵入犯罪への防犯対策

「鍵」の防犯対策

まずは「開かない鍵はない」ということを前提に考えましょう。

なので「開くまでに時間がかかる」防犯性能の高いCP錠などの鍵を取り付けるようにしましょう。

防犯性能の高い鍵やCP錠については「アナタの家の鍵は大丈夫?防犯性能の高い鍵を徹底解説!」のページで確認できます。

 

侵入犯罪を防ぐには、鍵を交換するだけでは不十分です。

玄関からの侵入を防ぐのであれば、侵入方法~不正開錠の手段に応じて「ドアに付いているパーツ全て」で侵入から守る対策が望まれます。

※不正開錠の方法は、こちらの「鍵開け」ページで詳しく説明しています。

 

以下、鍵開け方法別の対策です。

<ピッキング対策>

  • 防犯性の高い鍵に交換する
  • 鍵穴のない鍵に交換する
  • 鍵を2個以上にする(補助錠を取り付ける)

「ピッキング」とは、簡単に言うと鍵穴に専用工具を入れて鍵を壊すことなく開ける方法です。

なので、ピッキングに強いディンプルキーなどのCP錠に交換したり、鍵穴のない電子錠に交換すればピッキングは防げます。

他に1枚の玄関ドアに鍵を2箇所以上設置する「1ドア2ロック」も効果の高い対策です。

電子錠

 

<サムターン回し対策>

  • 保護カバーを取付ける
  • 防犯サムターンにする
  • 鍵を2個以上にする(補助錠を取り付ける)

「サムターン回し」とは、サムターン(ドアの室内側に付いているツマミ形状の金具)を外から工具などを使って回して、鍵を開ける方法です。

工具を入れる箇所は、のぞき穴(ドアスコープ)やドアに付いている郵便受けのほか、ドアに工具を入れるための穴を開けたりする方法などがあります。

内側のサムターンを開けるので、防犯性が高い鍵が付いていたり鍵穴がない電子錠タイプでも開けることができます。

対策としては、サムターンを簡単に回せないようにすればOKです。

プラスチック製の保護カバーは、後付けできるうえに料金も安いのでおすすめです。

 

サムターンカバー

<カム送り(バイパス)開錠対策>

  • スペーサーを取付ける
  • 錠ケースに対策プレートを取り付ける
  • 錠ケースを交換する
  • 鍵を2個以上にする(補助錠を取り付ける)

「カム送り(バイパス)開錠」とは、シリンダー(鍵穴)を持ち上げて、その隙間から細長い工具を入れて錠ケースのカムを回して鍵を開ける方法です。

ほとんどのシリンダー(鍵穴)は引っ張ると隙間ができますが、現在この方法で開く錠ケースはほぼ特定できています。

しかも新しめの錠ケースなら、ほぼ全てのメーカーが対策済みです。

古い錠ケースを使っていて心配の場合、上記の対策が効果的です。

部品の手配など含め、自分で対策できる自信がない人は鍵屋に相談してみてください。

 

<こじ開け(こじ破り)対策>

  • ガードプレートを取り付ける
  • 鎌付きのデッドボルトにする
  • 鍵を2個以上にする(補助錠を取り付ける)

「こじ開け(こじ破り)」とは、ドアとドア枠の隙間にバールなどを入れて物理的にドアを開ける方法です。

ドアや鍵そのものを壊すのではなく、ドア枠の中に収まっているデッドボルト(カンヌキの役割を果たす金属)を無効にするため、その部分のみを物理的に変形させます。

デッドボルトを露出させればドアは無施錠状態と同じになるため、開閉が可能になります。

対策としては、ガードプレートを取り付けてデッドボルト部分を補強したり、ドアが変形してもデッドボルトが露出しにくい鎌付きのデッドボルト(L字型の形状になったもの)にする、といったものになります。

こじ開け被害

 

 

<合鍵対策>

  • 鍵に番号の刻印がない鍵に交換する
  • 鍵穴タイプ以外の鍵にする

合鍵の被害とは、合鍵を勝手に作られて不在時に侵入されることを言います。

鍵やドアに痕跡はいっさい残らないだけでなく、家の中に入る時も鍵を使って開けるので、近所の人など顔見知りの人以外に見られても怪しまれる心配はありません。

対策としては「合鍵を作られない」ことです。

鍵に刻印された鍵のメーカー名と鍵番号で鍵は作成できます。なので、鍵を他の人に渡したり放置したりして「鍵番号を見られない」ように注意しましょう。

鍵に鍵番号が刻印されていない鍵にしたり、電子錠など鍵穴タイプの鍵に交換するのも良いでしょう。

合鍵被害の怖いところは、鍵を作られたり持たれたりしていても、家の中に入られた痕跡などがないと「侵入されたことに気づかない」ことです(2016年に人気俳優で歌手でもある福山雅治さんが、合鍵を使ったストーカー被害に遭ったこともあります)。

家の鍵の扱いには十分注意してください。

 

鍵が2個以上あればかなり安心

代表的な侵入手段別の説明をしてきましたが、他にも玄関の鍵からの侵入手段はあります。

気になる方は「鍵開け」ページで侵入方法を確認して対策してください。

総じてほとんどの侵入に効果が高いのが「鍵を2個以上にする(補助錠を取り付ける)」です。

侵入に時間をかけさせることが侵入阻止の最大の対策であるため、鍵が2個以上あれば単純に2倍の時間がかかるからです。

戸建てに住んでいる方は、まずはこの対策から考えるのがおすすめです。

補助錠の増設

 

「ガラス」の防犯対策

鍵の防犯対策は「どこから開けるか」や「どんな方法で開けるか」によって、対策や費用が変わってきます。

その点、侵入箇所1位(53.5%)だった「窓」からの侵入は対策方法も明確です。

『一戸建ての侵入箇所と侵入手段』の部分でも説明したように、窓からの侵入時はほとんどがクレセントを開けて侵入します。

なのでここを対策すれば、侵入危険度が大きく下がるのです。

もしくはガラス自体を割られないように強化する、のどちらかでしょう。

具体的には

  • 防犯ガラスにする
  • 鍵付きのクレセントにする
  • 補助錠を付ける
  • シャッター(雨戸)を閉める

防犯ガラスは2枚のガラスと中間層(膜)でできていますが、たその2枚のガラスの強度が高いのではありません。

接着性が高く、耐貫通性の高いポリビニルブラチール(PVB)素材の中間膜により、割れにくいガラスとなっているのです。

このポリビニルブラチール(PVB)素材の中間膜は、厚さが数種類あります。

その厚さで強度(=防犯性)が高くなり、もっとも厚いものだとガラスを割られる心配はほとんどないでしょう。

ただし厚いほどガラス代金も高くなるうえ、その厚いガラスがおさまるサッシが必要になるため、防犯ガラスへの交換時はガラス屋さんに相談するようにしましょう。

また、中間膜にポリビニルブラチール(PVB)ではなく、ポリカーボネートが使われているものもあります。

ポリカーボネートは耐衝撃性に加えて熱にも強い(-40℃~125℃)のが特徴です。

割れないガラス

 

防犯ガラスは料金もそれなりに高額になりますが、リーズナブルで防犯効果を期待できるのが「鍵付きのクレセント」です。

通常のクレセントと見た目はほぼ同じですが、鍵がないとクレセントが回らないのでサッシが開きません。

他には「補助錠的なものを付ける」のも同じくらい効果的です。

サッシ(ガラス)の補助錠は、料金も安く、自分で取り付けられるものが多いのも特徴です。

大きめのホームセンターでも売られているので一度機会があれば確認してみてください。

 

ファスナーロック

 

その他の侵入犯罪対策

鍵やガラス(サッシ)部分の具体的な対策を挙げましたが、それだけで完全に防げるわけではありません。

どこまでやるか、は個人の判断ですが、侵入犯罪を防ぐために「やりすぎ」ということは、ほとんどありません。

外出時だけでなく、家に帰って中に入ったら「鍵をかける」ことは基本中の基本です。

「防犯カメラを設置する」ことも侵入の抑止ともしも被害に遭ってしまった時に役立つでしょう。

最新の防犯設備に交換したり用意をしても、それらをしっかり使わない(=有効活用していない)と意味がありません。

現金や貴金属などをそもそも家に置かないことも立派な対策です。

どうしても家で保管する必要があるなら、防盗金庫を購入してそこに保管することも考えてください。

侵入犯罪の対策は過ぎたるは及ばざるが如しは当てはまらないと思います。後悔先に立たずにならないようにしましょう。