いろんな鍵のイメージ

日本は「鍵社会」です

日本ではあらゆるところに「鍵」があります。玄関や建物の入口だけでなく、個室となるトイレやお風呂場にも鍵は付いています。住居以外でも車やバイクなどの乗り物を動かすための鍵はもちろん、金庫やスーツケース、ロッカーやカバンなど「大切なものを守るため」としての鍵が無数に存在します。その中でもっとも我々の生活に身近なものが「玄関の鍵」でしょう。ほぼ毎日施錠と開錠がおこなわれ、不正侵入や盗難被害を防ぎ、家庭と家族の安全を守ってくれているものだからです。そのため、玄関の鍵には簡単に開けられないための防犯性や複数回の使用に耐える耐久性などが求められています。

 

現在、玄関の鍵に使われている主要な鍵のメーカーを紹介します。メーカーもたくさんあるうえ、各メーカーは機能性やデザイン、防犯性の違いなどから、いろんな種類の鍵を出しています。一般的な鍵穴タイプのシリンダー錠(※シリンダー錠にも複数の種類があります)、サムラッチ錠(装飾錠)、プッシュプル錠、チューブラ錠、インテグラル錠、円筒錠、引き戸錠などです。内部構造や施錠の仕組み、ハンドル形状などとの関連で区分けや呼び方が異なる場合もありますが、どれも鍵としての機能はほぼ同じと思っていいでしょう(第三者に勝手に開けられないためのもの)。

 

一般の人が鍵メーカーを知っておく必要はありませんが、自分の家に付いているメーカー名くらいは知っておきたいものです。鍵トラブルが発生して、鍵開けや鍵修理、鍵交換を鍵屋に相談する際にメーカー名や鍵の形状を伝えることでスムーズに依頼できたり、概算の費用などが算出できる場合もあるからです。

シリンダー錠を鍵で開ける

 

複製キーは鍵メーカーの鍵ではありません

街中の合鍵屋さんや靴修理屋さん、ホームセンターなどに“鍵を持ち込んで店舗で削って作成してもらう合鍵を複製キー“と呼びます。この複製キーは鍵メーカーの純正品ではないため、純正品のように「鍵交換した際にシリンダーと一緒に付属している」ものでもありません。純正の鍵のように、メーカーの刻印や鍵の情報を特定するための鍵番号などはありません(※ただ複製キーの元となる鍵を作っている会社名などが入っているので、一般の人は気づかないかも知れません)。参考までにこれら複製キーに入っている名称で多いものはFUKI、TLH、GSS、GTS、MISTERMINIT、HELLO!SMITHなどです。また鍵メーカーが作った純正の鍵に刻印されている鍵番号とは違い、複製キーには「H248」、「A51」などといったアルファベット1文字+数字1~3桁が刻印されているものが多いという特徴があります。

 

これら複製キーは、安いうえに当日その場で手に入るメリットがありますが、メーカー純正の鍵と比較して鍵の材質自体も違うし精度も違うので、使っているうちにトラブルが起こる可能性があります(鍵が抜くない、回らない、折れた、など)。メリットとデメリットを理解して、自己責任で使うようにしてください。

持ち込んだ鍵から作る複製キー

 

主要な鍵メーカーを紹介

MIWA(美和ロック株式会社)

■美和ロック株式会社は1945年創立で創業70年を超える日本国内のトップ錠前メーカーです。シェア率は60%前後を占めています。鍵に「MIWA」の刻印が入っていれば、美和ロック製の純正の鍵です(刻印がないとメーカー純正の鍵ではありません)。美和ロックは、戦後に日本住宅公団に錠前の指定メーカーに指定されたことで、一気に「MIWA」の鍵が普及しシェアを拡大しました。その後ピッキング被害なども受けますが、すぐにピッキング対策された鍵を開発するなどして、今現在も高い防犯性を持つや鍵やデザイン性が高い鍵を開発販売しています。シリンダー錠の超大ヒット製品である「U9」や、防犯性が高く洗練されたデザインで大人気のディンプルキー「PR」や「PS」は多くの戸建てや集合住宅で使われています。

 

GOAL(株式会社ゴール)

シェアはMIWAに及びませんが、GOALも圧倒的なシェアを誇る国内ダントツ2番手の鍵メーカーです。創業は1914年(大正3年)と長い歴史を持つ鍵メーカーで、国内初のシリンダー錠を開発したのもこのGOALです。本社が大阪にあることもあり、一部の業界関係者の間では「東のMIWA、西のGOAL」みたいな呼ばれ方をすることもあり、大阪に本社を持つハウスメーカーや賃貸会社の物件に、GOALの鍵が付いていることが多いです。GOALの鍵は片側がギザギザしたピンシリンダーのイメージも強いですが、最近では「V18」や「D9」などがGOALを代表するディンプルキーです。

 

U-SHIN SHOWA(ミネベアショウワ株式会社)

U-SHIN SHOWAは、建物の鍵以外の鍵も扱っているセキュリティシシステムの総合メーカーです。2002年に経営統合してユーシン・ショウワという知れ渡った社名になり、現在はミネベアツミのTOBを受けて完全子会社となり社名がミネベアショウワ株式会社に変わっています。ちなみにミネベアショウワ株式会社は株式会社ユーシンの100%子会社です。鍵メーカーとしては内溝形状の独特な鍵「WX」や「WS」が特徴です。

 

WEST(株式会社WEST inx)

1933年に西製作所として創業した会社で、個性的かつデザイン性の高い製品を作ることで有名です。時代の流れに合わせて引戸錠、電気錠、プッシュプル錠など斬新なオリジナル製品を輩出してきました。現在WESTの主流となる建物の鍵は、持ち手部分に丸い3つの穴が開いた「333」や「916」などのシリーズがあります。防犯性の高さと独創性から、デザイナーズマンションなどで使われることも多いのが特徴です。

 

ALPHA(株式会社アルファ)

1923年創業でアルファは、玄関や建物以外の鍵も数多く生み出しています。車載用電子キーシステムや精密メカニカルキーなdも有名です、なかでもアルファは1964年に日本初のコインロッカーを設置した会社としても有名です。以降、様々な場所や用途で設置されるロッカーを作ってきました。建物・玄関の鍵でも独自性の鍵を作っており、もっとも有名な「FB」の鍵はカギの先端にフローティングボールを埋め込んである独特の形状をしています。

 

dormakaba(ドルマカバジャパン株式会社)

KABAは精密機械工業が盛んで防犯率国でもあるスイスで誕生した鍵メーカーです。高精度切削技術によるディンプルキーと頑強なピンシリンダーを開発し、スイスの銀行やルーブル美術館などに採用されています。そのKABA社とDORMA社が合併後、日本カバ社も2016年にドルマカバジャパン株式会社に社名変更されました。鍵の取扱いも厳重で、一部の鍵は使用者本人がメーカーに直接発注しないと作成できない仕組みになっています。

 

Clavis(株式会社シブタニ)

株式会社シブタニは1946年に創業、そのシブタニが大切な生命と財産を守るために誕生させた鍵ブランドがクラビスです。独自の技術革新と意匠性の高いデザインの鍵が多く、クラビスの代表的な鍵である「F22」や「Q18」などは細身の形状にディンプルが彫られた独特かつ美しい形状です。鍵穴自体も小さいため、ピッキングによる不正開錠もできない仕様です。

 

AGENT(株式会社大黒製作所)

1934年創業の株式会社大黒製作所の鍵ブランドがエージェント(AGENT)です。公団錠やサムターン式の円筒錠のほか、インテグラル錠や取替玉座などの製品を発売しています。昨今では高齢化社会に配慮したプッシュプル錠やレバーハンドル錠も開発販売しています。エージェントの鍵で有名なのが、ドアノブ一体型の万能取替握り玉の「GMD-500」でしょう。ほとんどのインテグラル錠に対応するうえ、鍵も防犯性が高いディンプル錠になっています。

 

SEPA(株式会社ヒナカ)

昭和22年に中村製作所として発足し、昭和30年に株式会社日中製作所に組織変更して鍵メーカーとしての認知度を上げてきました。そして2023年7月10日に、社名を株式会社ヒナカに変更しました。SEPAは株式会社ヒナカの鍵ブランド名で、公共施設や介護施設などにも使われるほど優れた強度・耐錆性を備えた鍵です。鍵以外にも各種カーテンレールや手すりなどの建築金物のメーカーでもあります。

 

HORI(合資会社堀商店)

堀商店は1890年に創業し、大正の初めごろに自社による錠前や鍵、建具金物などの製造販売を始めました。HORIの代名詞ともいえる「トライデントキー」は、見た目から他の鍵とは明らかに違う形状をした独特な鍵です。棒状の先端部分の曲面上に、1列15箇所のそれぞれ深さが異なる楕円形ディンプルを3列に並べた独特な形状を持っており、不正な合鍵作成ができません。もちろん鍵穴もその大きさと形状ゆえにほぼ不可能です。

 

NAGASAWA、古代(株式会社長沢製作所)

創業1916年と歴史ある株式会社長沢製作所は、鍵を始めとして自社ブランドの建築金物の製造販売をしています。鍵ブランドとしては社名でもあるNASGASAWAのほか、サムラッチ錠(装飾錠)で有名な古代ブランドがあります。また一般の家庭用には見かけませんがアナログ式のボタン錠で今なお数多くの建物や施設で採用されているKEYLEX(キーレックス)も株式会社長沢製作所の代表的な鍵ブランドです。

 

KAKEN(家研販売株式会社)

■家研販売株式会社は、1977年に大阪府八尾市で創業されました。錠前や鍵は防犯機器事業の中で扱われており、1ドア2ロック用の面付本締錠である「安心錠」はかなり人気の商品です。KAKENの鍵で有名な「ベルウェーブキー」は、表面に波状の溝が刻まれた合鍵作成が非常に困難です。それまで自動車の鍵にしか使われていなかったウェーブキーをKAKENが住宅用の鍵として採用し、開発・製造した鍵です。

 

INAHO、TIERKEY(株式会社フキ)

合鍵用のブランクキーのメーカーとしても有名な株式会社フキですが、1963年に日本初のキーマシンをを製造・販売もしたキーマシンメーカーとしても有名です。その株式会社フキの鍵ブランドが「イナホ」や「ティアキー」です。数々の合鍵複製機を製造してきたFUKIの技術力を注ぎ込んだブランドで、合鍵の複製が困難で鍵自体の防犯性も高く、それでいてシリンダーなどはコストパフォーマンスが高いことでも有名です。

 

OPNUS(株式会社オプナス)

昭和5年、創業者が東京都荒川区で旋盤加工品の製造販売を始めたことが始まりで、株式会社オプナスの設立は平成15年となっています。錠前や鍵だけでなく、銀行向け金庫用ダイヤル錠の市場においてシェアを確立しています。他にもデザインと機能性に優れた防犯サムターン「パタンテ」や可変ディンプル機能を搭載した「メモリス」など、独創的かつ機能的な製品を数多く製造販売しています。

 

MUL-T-LOCK(Mul-t-lock社)

マルティロックはイスラエル製の鍵で、テロや戦争の絶えない地域で世界的な人気も高い鍵です。もちろんセキュリティの高さも世界トップレベルで、複製も簡単に作れないよう専用のオーナーカードがないと合鍵も作れません。そのため鍵には日本メーカーに刻印されている鍵番号はありません。合鍵の作成は日本の輸入総販売代理店であるTACトレーディング(株)の特約店でしかできません。

 

ROYAL GUARDIAN(株式会社トーショウサービス)

ロイヤルガーディアンは世界初のデッドロック機構を搭載し、不正開錠のピッキングを完全に防ぐ堅牢な鍵です。合鍵を作る際にもセキュリティカードが必要で、簡単に合鍵を作られないようになっています。メーカーである株式会社トーショウサービスが2022年に事業撤退したため、シリンダーの販売は終了しています。ただ合鍵は代替品のブランクキーを使って作成可能な店舗も残っているようです。

 

その他メーカー

鍵メーカーは上記以外にもあります。あと鍵の刻印に「TOSTEM」や「LIXIL」など建材メーカーやドアのメーカーの刻印が入っているものも多く、一般の方はその刻印=鍵メーカーと思っている人も少なくありません。ただそれらの鍵は、建具やドアのデザインに合わせて鍵メーカーと連携して作った共同開発品で、実際の鍵自体の作成は鍵メーカーとなります(MIWA・GOAL・ALPHA・U-SHIN-SHOWAなど)。特に一般の人が知っておく必要はありませんが、予備知識として知っておいてください。

鍵メーカーのロゴ

 

大手鍵メーカーは個人対応をしない!?

上に挙げた国内の大手鍵メーカーは、個人のお客さまへの対応をしません。たとえば玄関の鍵がMIWAの鍵で、その鍵の調子が悪くなったのでメーカーであるMIWAに修理をお願いしたい、と思っても直接MIWAがその依頼を受けてくれることはありません。MIWAの場合、認定サービス代行店(SD店)が個人のお客さまへの対応をおこないます。もちろん緊急対応の鍵屋など、SD店でなくてもMIWAの鍵や他社の鍵のトラブルを解消したり交換することはできますが、SD店は美和ロックの研修を受けたり定期的な勉強会や講習会への参加も求めらます。そのうえで美和ロックの審査をパスした法人がSD店として認証されます。

 

 

異業種からの参入が目立つスマートロック

ここ最近、賃貸物件などにも普及が進んでいるスマートロックは、既存の鍵メーカーとは関係ない異業種からの参入も多いのが特徴です。と言うのも、既存の鍵メーカーはシリンダー錠や錠ケースの構造を熟知していて実績も豊富です。長年培ってきたハウスメーカーやゼネコン、不動産業界などとの付き合いもあるでしょう。異業種の会社がそんな分野にいきなり参入しても勝ち目は薄いのは明らかです。ただスマートロックは、既存のシリンダー錠に後付けする機器です。外側のシリンダー(鍵穴)ではなく内側のサムターンにかぶせるように取付けて、サムターンを電気(電池)の力で操作して施錠や開錠をおこないます。鍵メーカーが持っているシリンダーや錠前の知識や技術がなくても作成できるのです。だから鍵とは無関係の企業や会社もたくさん参入してきて、デザインや価格、販売方法、セキュリティー面、利便性で差別化をしています…。このようなスマートロックを開発・販売している会社は「鍵メーカー」という呼ぶのは少し違うと言えるでしょう。

後付けのスマートロック