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防犯サムターン(略して「防サム」ということもあります)とは、文字通り「防犯対策されたサムターン」のことを言います。
では、そもそも「サムターン」とはなんでしょう? 一般の人でサムターンという名称を聞いたことがある人は少ないと思いますが、ほとんどの人が毎日のように使っているものです。
サムターンとは玄関などドアの室内側についているツマミ形状のものです。サムターンの「サム」は英語のThumbのことで「親指」を意味します。サムターンの「ターン」はTurn=回す、という意味です。サムターンは英語で表記すると「Thumb Turn」となり、ここから付けられた名称です。
サムターンの機能
サムターンを回すことによって、施錠したり開錠することができます。ほとんどのサムターンは金属製の材質ですが、持ち手部分がプラスチックだったり形状がツマミ形状ではない特殊なものも存在します。
このサムターンを操作することで、錠前(錠ケース)本体からデッドボルト(かんぬき部分)が出たり引っ込んだりします。施錠時に出てくるデッドボルトは、ドア枠に取りつけたストライクと呼ばれる受け部分にかかってドアが開かなくなる仕組みです。
通常のサムターンは、室内側から手で回すだけで簡単に操作できますが、この「簡単さ」が逆に弱点となり、サムターン回しと呼ばれる不正開錠手口に狙われることがあるのです。
それを防ぐ目的で普及したのが「防犯サムターン」です。防犯サムターンはサムターン回しを防ぐためにいろんな種類があり、以下のような機能を持つものが多いです。
・簡単にツマミを回せない
・サムターンに触われない
・正しい操作をしないと動かない
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サムターン回しによる不正開錠
一昔前は鍵穴の構造が簡単だったため「ピッキング」による被害が多数起こりました。団地など多くの玄関に付けられていたMIWAのディスクシリンダーと呼ばれる鍵穴は、ピッキングの道具とやり方さえ覚えれば、素人でも簡単に開けることができました。
その後、鍵穴の防犯性能は年々高くなり、昨今増えてきたディンプルキーはほぼピッキングで開けることができない防犯性能を有しています。それに代わって近年増えつつある侵入手口の一つが「サムターン回し」です。
サムターン回しとは
・ドアスコープ(のぞき穴)
・郵便受け
・ドアの隙間
などから特殊な工具を玄関ドアの内側に差し込み、サムターンを直接回して鍵を開ける手口です。
サムターン回しによる開錠は以下のような特徴があります。
・鍵穴やドアを壊さない
・音が出にくい
・短時間で開けることができる
鍵開けの証拠が残りにくく、傷もつかず、音も出ない、ので、ドアスコープや郵便受けが付いていることが多いマンションやアパートなどの集合住宅で、被害が多いと言われています。防犯サムターンは、こうした「内側からの不正操作」を想定して設計されています。
防犯サムターンのメリット
サムターン回しによる不正開錠を防ぐ目的で作られた防犯サムターンの具体的なメリットは以下となります。
1.簡単にサムターンを回せない
防犯サムターンの最大のメリットがこれです。多くの防犯サムターンは工具で触れても簡単に回らない構造になっています。
2.低費用で対策できる
高価なドアや錠前ごとの交換をしなくても、サムターン部分のみの交換で対応できるケースも多いです(メーカーや種類にもよります)。部品だけの交換なので料金も安く抑えられます。
3.見た目ではわかりにくい
ドアの内側にあるため見た目ではわからず、もし見えたとしても通常のサムターンと大きく変わらないものも多いため、侵入者に対策されていることを気づかれにくいです。
防犯サムターンのデメリット
防犯サムターンにもデメリットや注意点はあります。
1.操作が少し複雑になる
防犯性を高めるため、通常のサムターン操作(=ツマミを回す)とは違う操作が必要になります。具体的には
・(小さいボタンなどを)押しながらツマミを回す
・ボタンを解除する
・ツマミを引っ張る
・ツマミ本体を取り外す
などです。
特別に難しい操作ではないですが、高齢者や小さなお子様がいる家庭では、使い勝手を事前に確認しておく必要があるかも知れません。
2.錠前や錠ケースとの適合が必要
これは防犯サムターンを後付けする場合ですが、ドアや錠前、錠ケースの種類によっては「取り付け不可」のものや、取り付けるために「追加部品が必要」なものもあります。そのため、後付けする場合は事前の適合確認が必須です。
3.緊急時に鍵開けが困難
鍵を紛失した、鍵が回らない、などのトラブルで鍵開けを鍵屋に頼む場合、防犯サムターンは簡単に開けることができません。特殊な工具をドア内部に入れるためにドアスコープやポストがあるのは必須条件ですが、防犯サムターンの種類によっては開けられないものも一部あります。また開けられる防犯サムターンでも、作業料は高額になる傾向があります。
防犯サムターンの主な種類
防犯サムターンの機能は説明しましたが、具体的にどのような防犯サムターンがあるのか代表的なものを紹介していきます。新築物件などで錠ケースやシリンダーとセットで取り付けることも多いため、錠前メーカーが出しているものが多いですが、後付けしたり自分で交換できるようなものを出している錠前メーカー以外のものもあります。
「外部から不正に開けられない」という主目的である防犯サムターンですが、そのための機能は同じようなものが多いのも特徴です。ただし使い勝手やデザインなど、メーカーによっていろんな種類があります。自分の家に付いているものがどういったものか、防犯サムターンへの交換を考えている人は、どれがいいか、など考えながら見てください。
押し込み式サムターン(スイッチ式サムターン)
サムターン中央や側面にある「解除ボタン」を押しながらツマミを回すタイプのサムターンです。MIWA製品で呼ばれるスイッチ式サムターンと言われることも多いです。
施錠する際はボタンを押さずに回せますが、開錠時は解除ボタンを押しながらでないとツマミが回らない構造になっています。操作自体も比較的シンプルで感嘆なうえ、部品を取り外すこともないので紛失したりする懸念もありません。メーカーや種類で微妙な違いはありますが、現在もっとも普及しているタイプです。
<下の写真はMIWAのスイッチサムターンでかなり普及率も高い有名な防犯サムターンの一つです。両側にある小さな突起部分を押しながらでないとツマミが回せません>
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取り外し式(脱着式)サムターン
文字通りサムターン自体を外せるタイプ。サムターンがないので開錠や施錠の操作ができません。防犯性能はもっとも高いサムターンです。外出時にサムターンを外したりできるほか、徘徊防止対策にもなります。
デメリットしては、サムターンを付け外しする手間があるほか、外したサムターンを紛失してしまうリスクもあります。
<サムターンのツマミ部分が鍵の持ち手形状のようになっていて、この大きなツマミが円筒形の部分から取り外しができます。プッシュプル錠の下側だけこういったサムターンになっているものも多いです>
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空転式サムターン
サムターンを空転させることで、操作ができなくなるサムターンです。空転モードに切り替える方法は、サムターン(メーカー)によって様々です。スイッチやノブを引き出したり、鍵穴に鍵を入れて操作するタイプなどもあります。ただ空転モードにするのが面倒に感じることも多いようで、空転モードにしないと通常のサムターンと同じ機能になります。
<下はドルマカバ(KABA)社のセーフティサムターンです。鍵穴部分い鍵を入れて90度回すと空転モードになります>
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偏芯サムターン
見た目は通常サムターンですが、ツマミ部分にかかる負荷が偏った状態では回らなくなるサムターンです。普通に手で操作する分には問題なく動きますが、外部から棒のようなモノなどでサムターンの端に負荷をかけて回そうとした場合には回らなくなります。特に日常生活で注意することもなく使えるのがメリットです。入居者も偏芯サムターン(防犯サムターン)であることを知らないで使っている人が多いです。
<下はGOALのTME防犯サムターンです。ツマミの片側だけに力がかかっても回らない偏芯機能を持ったサムターンです。ツマミの両サイドにある小さなボタンを押して手前に引っ張ると空転モードにもなります>
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その他
上記以外の特殊なサムターンもいろいろあります。錠前メーカー以外のものもあるので、自分で後付けする場合は機能性や取付け方法、料金などを見て選んでみてください。個性的なものとしては以下の2つのようなものもあります。
防犯サムターンエッグは、玉子型のカバーをサムターンにかぶせて、さらにそのカバーを押しながらでないとサムターンが操作できません。
オプナスのスイングサムターンは、ツマミ部分が特殊形状になっていて、開錠や施錠時にフラットになっている部分を引き起こして操作する、といったものです。
<下はオプナスのスイングサムターンです。写真はフラットになっている状態で、この状態だと外部jから回すことをできません>
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防犯サムターンではありませんが、サムターンを不正開錠から防御する部品として、サムターンカバーやサムターンガードなどがあります。
これらはサムターンを外部から操作されないよう、サムターンの周囲をプラスチックのカバーなどで覆うようなものです。部品はかなり安く購入でき、後付けで簡単に取付けできるのが魅力です。
専門的観点からの補足(防犯性能)
防犯サムターンはCP認定(※)の考え方と相性が良く、実際に日本ロック工業会に加盟している錠前メーカーのサムターン製品の多くが、防犯性能を持ったサムターンとしてCP部品の認定を受けています。
ただ注意したいのは、CP部品は完全に不正侵入を防ぐものではありません。わかりやすく言うと、CP部品は侵入するまでに5分以上かかる防犯性が高いもの、という認識です。
侵入犯は時間がかかることを極端に嫌うため、防犯サムターンが不正侵入を防止する効果があるのは間違いありません。ただし最近、戸建てでは玄関ではなく窓からの侵入が圧倒的に多いのでそちらの防犯対策も必須です。
※CP認定・・・CPとは防犯を意味する「Crime Prevention」の頭文字から付けられた名称で、防犯建物部品の共通標章です。2002年に警察庁や国土交通省、経済産業省などが参画して5団体防犯建物部品普及促進協議会(https://www.bouhan-cp.jp/index.html)を設置して「防犯性能の高い建物部品」を認定します。そこで認定された製品・部品をCP部品と言います(たとえばCP認定された鍵の場合はCP認定錠と言います)。
CP認定品や防犯対策については、こちらのコラム(アナタの家の鍵は大丈夫? 防犯性能の高い鍵を徹底解説!)でも説明しているので参照してください。
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まとめ
防犯サムターンは
●サムターン回しによる不正侵入対策として有効
●比較的低コストで導入ができる
●住まいの防犯レベルを確実に底上げできる
といった特徴を持つ防犯部品です。その一方で、防犯サムターンによっては、操作性や使い方に注意が必要なものもあるため、どの防犯サムターンにするかは家族構成や住環境に合った種類で選ぶようにしてください。
付録(鍵屋と防犯サムターン)
マンションやアパートなど、玄関ドアにのぞき穴(ドアスコープ)が付いている建物の場合、鍵屋が鍵を開ける方法は「サムターン回し」が主流です。ただし昨今は防犯サムターンになっているものが多く、新しめの建物では普及率もかなり高くなっています。
そんな建物で鍵を紛失したりして鍵開けが必要になると、今で以上に鍵開け料金が高くので注意してください! 防犯サムターンを開けるためには「専用の工具」と「技術」が必要なのです。しかも通常サムターンは開けらえても防犯サムターンは開けられない、という作業スタッフもまだ一定数います。さらに防犯サムターンを開けらえる作業スタッフでも、特殊な防犯サムターンだと開けられないものもあるのです。そうなったら、鍵穴を壊さないと開けられません(※サッシの窓が出入りできればクレセント開錠できる場合もありますが)。
このように鍵屋でも開けるのが難しい防犯サムターンを、不正侵入しようとするものが開けられるとは思えません。防犯サムターンを開けられるのは、鍵屋だけと思っていいでしょう。防犯サムターンを破壊開錠せずに開けたい場合は、トラブル救急車にご相談ください。防犯サムターンを開けられる作業スタッフも多数います!
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