電気の力で開錠や施錠をおこなう電子錠
最近は戸建ての玄関や賃貸マンションなどでも電子錠を見かけるようになりました。
電子錠を一言で言うと「電気の力で鍵の開錠や施錠をおこなう鍵」といえます。
電子錠のメリットはどんなところ?
電子錠は鍵穴タイプのシリンダー錠に比べて以下のようなメリットがあります。
- カードなど非接触で開けられる
- テンキー入力でも開けられる
- 防犯性が高い
- 自動施錠機能で鍵の閉め忘れなし
- 入退室管理も可能
電子錠は鍵を鍵穴に入れて開錠したり施錠したりする手間がありません。
カードやスマホをかざしたりするだけの非接触で簡単に開けることができます。さらに最近では電子錠にかざさなくても、専用の機器やスマホを持っているだけで(カバンの中にあるだけで)開くものもあります。
鍵穴がないからピッキングされたり鍵穴に異物を入れられる心配もないので防犯性は高いです(※防犯性能高い鍵はこちらのページで確認ください)。当然、鍵を持たなくて良いので、鍵を紛失したり忘れてきたりすることもありません。暗証番号で開け閉めしている場合は本当に楽ちんです。
ただし暗証番号を一定回数間違えたら警告音が鳴ったり、こじ開けをした場合にもアラームを鳴らせたりするものもあります。防犯性の高さは鍵穴タイプのシリンダー錠よりも間違いなく高いでしょう。
電池で動く電子錠はデータを蓄積することもできます。いつ、どの端末(カード、スマホなど)で鍵を開けたかなどを記録しておけば、何かあった際に役立ちます。室内ドアで電子錠を使う場合は、この機能を重視していることが多いでしょう。
電子錠のメリットはけっこう多いのです。
電子錠と電気錠ってどこが違うの?
電子錠と同じような意味で電気錠という言葉もありますが、厳密には電気錠は電子錠とは違います。
どちらも「電力」で動くということは同じなので、電気錠も大きなくくりの中だと電子錠の中に入るかも知れませんが…。
電子錠は「電池で動く」もので、電気錠は「電源で動く」と思えば良いでしょう。
電池で動く電子錠は電池切れになると作動しなくなりますが、電源で動く電気錠は電池切れの心配はありません。ただし停電が起こると電気錠は作動しなくなります。
電気錠は常に電気が通っていて、錠前である鍵部分のほかに制御部や操作部などがあります。鍵を動かすための電源は配線によって電気を供給されているので、取付けや交換には配線工事も必要です。そのため電気工事士の有資格者でないと作業ができません(電気工事士には第二種と第一種がありますが、一般住宅や店舗など600V以下で受電する設備の工事は第二種の資格でOKです)。
電気工事士の資格を持っている鍵屋もありますが、緊急駆けつけ専門の鍵屋だと鍵開けや鍵修理、鍵交換など緊急対応の作業がメインであるため、電気工事士の資格を持っている作業員は多くありません。電気錠の相談をする際には事前に資格があるかを確認するようにしましょう(※電気錠でもシリンダー部分の交換等は資格不要です)。
前述のとおり、鍵穴タイプの鍵を電気錠に変更するのはかなり大変です。鍵部分の交換だけでなく、配線の通す場所や制御盤の位置を決めたりする必要もあるからです。費用もかなり高額になるでしょう。
そのため電気錠が付いているドアは、人の入退室をしっかり監視したい場所や金品などを取り扱う部屋の入口に設計段階から付いていることが多いです。
その点、電池で動く電子錠は交換や取付けも簡単なものが多く、現在人気のスマートロックも電子錠の一種と言えます。
電子錠の種類はたくさんあります
電子錠の種類はとにかくたくさんあります。
鍵メーカーが出しているのはもちろん、鍵とは関係のないメーカーが出していたり、外国製のものもあります。
スマートロックはスマホとの連動機能があるため、IT関連の会社が作っていたり、中にはクラウドファンディングを募って出資者にそのスマートロックを提供しているものもありました。資金調達および宣伝効果もあり、かなり話題にもなりました。
一般的なものは、鍵穴部分であるシリンダーを外して電子錠に交換するタイプです。
通常の鍵交換と同じ要領で交換できるので、ドアに穴を開けたりサムターン(内側)を変えたりする必要もありません。
最近多いスマートロックは、サムターン側に取り付けるものがほとんどです。
内側のサムターン部分に取り付けたスマートロックをスマホで操作して、サムターンを動かして施錠や開錠をおこなう仕組みです(スマートロックの中にはサムターン側と鍵穴部分両方に取り付けるものもあります)。
電子錠はいろんな開け方ができるのも特徴の1つです。開け方は
- テンキー(暗証番号)
- カード
- 専用シール
- スマートフォン
- 指紋認証
- 静脈認証
- 顔認証
- 虹彩認証
- 遠隔
- 非常用の鍵
静脈認証、顔認証、虹彩認証などの生体認証は、一般の住宅などでは見ることはないですが、近い将来普及する可能性もゼロではありません。
Wifiなどを使ったネットを使っての操作のほか、NFC(Near Field Communication)と呼ばれる近距離無線通信技術を使うものもあります。
このNFCの通信距離は10センチくらいなので、非接触カードやNFCタグ付きのシール、スマホなどを「かざす」ことで電子錠が反応します。
あとは任意に設定した暗証番号を入力するお馴染みのテンキーでの開錠です。
ただしテンキータイプは入力時の背後から番号を盗み見されたりする危険性もあるので、できればそれ以外のNFCで開ける方法を使用した方が良いでしょう。
電子錠はどうやって選べば良いの?
とにかく種類が多い電子錠ですが、何を基準にどうやって選べば良いのでしょう。
目安となるのは以下の4つではないでしょうか。
- 使用場所
- 目的(使用方法)
- 料金
- デザイン
使用場所は、電子錠がその場所に適さないものがあったり、対応する電子錠がなかったりする場合があるため事前に確認が必要です。屋根のない外部に面したところなら雨風に強いタイプ、人里離れた田舎や山の中なら、電池を使わないタイプ(ハンドルを動かして必要な電力を発生させるもの)など、今は色んな機能付きのものもあります。
目的および使用方法は、なぜ電子錠にしたいかです。鍵穴タイプがイヤだから、店舗など多数の人間が出入りするから、遠隔で開けたりできるようにしたい、防犯性を高めたい、などです。オフィスや店舗の通用口に電子錠を付ければ、入退室の履歴データも残るうえに人が辞めたりした場合も、その人が持っていたカードだけ無効にしたり暗証番号を変えれば良いだけなので、管理が楽になります。
料金は文字通り電子錠の金額と施工代金です。スマートロックのように自分で簡単に取り付けられるものは施工代金はゼロですが、面倒そうな電子錠を取り付けたいので鍵屋に頼もう、と思っている人は作業代金がかかります。鍵屋など業者に頼む場合は、無料見積りで来てくれるところに頼むようにしましょう。
最後のデザインは文字通り、見た目や大きさ、形や色です。機能面は良くても、見た目がカッコ悪いから人目につくところに付けたくない、と思う人がいるかも知れないので…。
キーレックスは電子錠ではないけど大人気の鍵です
電子錠のようにボタンを使って開ける鍵でキーレックス(KEYLEX)というメカニカル錠があります。
メーカーである長沢製作所の大人気の鍵で、至るところで見ることができます。
種類やバリエーションも豊富で、ボタンの数が多いものや引き戸対応のものもあります。
このキーレックス最大の特徴は、電子錠と違って「電力不要」ということでしょう。電池も使いません。
構造もシンプルで頑丈だから壊れにくいし、雨など悪天候の屋外の設置にも向いています。
鍵穴がないから防犯性能も見込めます。
店舗やオフィスの外に面した通用口などでよく使われていますが、補助錠として玄関や室内ドアに使われることもあります。
通用口に設置してアルバイトなど短期労働者に番号を教えた場合でも、アルバイトスタッフが退職した後に番号を簡単に変えることができます。
電子錠にも当然デメリットはあります
電子錠は機器代が高い
メリットが多い電子錠ですが、もちろんデメリットもあります。
まず真っ先に思いつくのは電子錠本体の部品代が高いということ。
部品代の目安としては、鍵穴タイプのシリンダー錠より3~4倍くらい高いものが多いです。
最近は最小限の機能だけにして費用を抑えたものもあるし、スマートロックも安さを売りにしているものも増えています。
電子錠の購入や設置を考えている人は、こまめにネットで相場などをチェックしましょう。
防犯性は高いけど不正侵入の危険はある
テンキー式で開け閉めしている場合は注意が必要です。ランダムテンキーと言って開錠時に毎回テンキーの位置が変わるものは良いですが、テンキーの位置が固定のものは、いつも押す番号部分だけ指紋が多かったり、表面の摩耗があったりします。
その痕跡を何度か組み合わせて押すと簡単に開いてしまいます。2024年8月にも、不在時に指紋の跡を何回か試して不正侵入した事件がありました。5回連続で番号を間違えると受付できなくなりますが、また時間を置けば入力はできるようになります。そうやって入居者が不在時に何回か試して鍵を開けて不正侵入したというものでした。
指紋の跡などは定期的に拭き取るようにしましょう。
もう一つ注意したいのが、テンキーを押すところを見られないようにすることです。
近くで見る人はいないでしょうが、例えば離れたところから簡易望遠鏡みたいなもので見られてしまうと、ランダムテンキーの電子錠でも一発で開けられてしまいます。
テンキーを押す場合は体で隠すようにしながら、遠方からでも見られないように注意してください。
取付けが面倒なものが多い電子錠
電子錠によっては取付けが面倒で難しそうなものもあります。
ネットで調べながら自分で交換することもできますが、鍵穴タイプよりは明らかに難しいです。
既存の鍵穴やハンドルを外して…という作業が必要な電子錠で、自分取付けできる自信がない人は鍵屋に頼むのもありです。料金はかかりますが、早くて確実です。
鍵穴部分に付ける電子錠と違い、スマートロックは簡単です。
サムターン(内側の鍵)の上に、付属されている強力なシールでスマートロックを被せるように取付けするだけ、というものが多いので、スマートロックの取付けは自分でやりましょう。さすがにこの工程では鍵屋さんに頼むのはもったいないです。
自分で購入する時も注意が必要です
電子錠をDIYで交換・取付けする場合、もっとも注意したいのは購入時かも知れません。
電子錠によって交換できるドアや鍵穴の種類、ハンドルの形状やサイズが決まってくるからです。
料金が高めの電子錠を購入しても、取り付けられないものだったら無駄になってしまいます。
料金を気にしないのであれば、鍵屋にすべて頼んでしまうのもありです。
自分の希望する電子錠を伝えれば、取付け可能か確実にわかるし手配もしてくれ、取付け工事まで頼めます。
電子錠ならではのトラブル
電子錠は便利で防犯性が高いのですが、トラブルになった場合に対応が難しくなるものが多いです。
鍵穴がないとピッキングで開けることはできません。内側が通常のサムターンであれば、覗き穴から特殊工具を入れてサムターンを回す開け方もできますが、それができないと破壊開錠の可能性が高まります。
電池切れになった、ボタンやカードで反応しない、といった理由で開かなくなることもあります。
最近の電子錠は電池残量が少なくなると、警告音などで教えてくれるのでタイミングを逃さず交換するようにしましょう。
電池が切れた時やボタンが反応しない場合の対策をされている電子錠も最近は多いですが、そういうことになる可能性も事前に考慮して電子錠を選ぶようにしましょう。
スマートロックの場合、外側の鍵穴はそのままであってもディンプルキーだとピッキングはできないし、覗き穴からのサムターン開錠はスマートロックの形状によっては難しいものもあります。
同じくスマートロックのトラブルで多いのが、サムターン側に取り付けた強力シールがはがれてしまうことです。スマートロックの位置がずれてしまうと、スマホで操作をしてもサムターンがちゃんと回らずに開錠できません。
電子錠は便利な機能が多い反面、トラブルになった際は上記のようにかなり面倒になったり、最悪電子錠を壊さないと開かない場合があることも覚えておきましょう。